焚き火を囲んで眠るような記事

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2007年 07月 12日

パンの善し悪しは山に聞け

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僕は、パン作りに迷うと、山へ登る。
「なるべく自然にパンを焼く。」
それが、僕のモットーだ。
石臼で挽いたグレーがかった小麦粉を使い、
水と塩だけで捏ね、薪で焼く。

自然の理にあっていれば、
ウソの無いパンになるはずだからだ。

自然のルールは、誰が作ったものでもない。
だから当然ウソもない。
時が経っても腐らない。

世の中に数ある常識もルールも、
宗教だって経済だって、
人が作ったものだからウソがある。

だったら僕はウソの無い自然の側の仲間になりたい。
けれど、僕らの世代は、
山で芝刈りしたり、川で洗濯したりと、
桃太郎のお話のような生活をしたことはないから、
自然界から仲間はずれをくっている。

一昔の日本人なら誰でももっていた、
季節を感じ、植物や動物や、目に見えないものまでもを感じる力を、
どうやら、無くしてしまったようなのだ。

そこで、僕は山に登ることにした。

雨が降っても、雪が降っても山を歩き、
その地形や植物や動物のことを知り、
火を焚き、川の水を飲み、
夜の寒さに震えて、暗闇に恐怖すれば、
すこしは自然側の人になれると思ったのだ。

本格的に山の勉強をしたのは、
北海道で山ガイドの修行をした時。

毎日毎日山へ登った。
時に岩を登り、時に川をよじり、
お客さんの荷物を背負って、
一歩一歩ハーハー言いながら歩いた。

山へ通っていると、
季節に敏感になり、空を見るようになり、風を気にするようになる。
山菜の味を知り、山で飲む水の美味しさを知る。
谷や尾根の起伏の造形美に圧倒され、
感動と恐怖が一体となった自然の芸術性をみる。

だから僕は、
今でもパン作りに迷うと、山へ登るのだ。
 
久しぶりに行くと、山は街暮らしに慣れた僕を拒む。
クモの巣が煩わしく感じられ、
虫を気持ち悪く感じ、
土の湿り気が肌に合わない。
 
でも、
山の頂で焚き火を焚いて、一晩過ごす頃、
やっと自然の側に帰れる。

ホッとやさしく、ゆったりと、
自然が包み込んでくれるような安心感を覚えるのだ。

そんな時、
リュックから自分の焼いたパンを取り出して食べる。
 
その場の雰囲気にしっくりと馴染んだのなら、、、
僕のパンは大丈夫だ。

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連載「旅するパン屋」第2回
『中国新聞』7月5日朝刊
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by takineru2 | 2007-07-12 20:15